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◎ 公開中の新作から……… 『007 カジノ・ロワイヤル』  2006年度作品
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 監督:マーティン・キャンベル
 出演者:ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン、ジュディ・デンチ、ジャンカル
ロ・ジャンニーニ、ジェフリー・ライト、イザーク・デ・バンコレ

 シリーズ中のベストではないか。他に観てるのは3本しかないので断定はできない
が、超えるものがあるとは思えない。

 ちなみに過去に観たのは二番館二本立ての1本と、レンタル2本のみ。映画好きが
007だけよけて通ってきたのは、その古めかしい臭さゆえだった。東西冷戦が終結
する以前からそのクサさはにおっていた。男性至上主義のクサいにおいは、大半のポ
ルノ映画並みだ。

 新作は面白い。ボンドが人間くさく、リアルだ。ヘマをやる。ボコボコにやられて
苦しむ。ズコーンと落ち込む。ヒロイン(エヴァ・グリーン)も人間扱いされ、道具
や飾り物ではなくなった。なによりすばらしいのは、CGなどのエフェクトに頼らな
い、生身の体を使ったアクション。このアクションの切れ味が抜群にいい。

 ヴァーチャルからリアルへ。荒唐無稽からリアルへ。新しいボンドは確実にリアリ
ティをめざして変貌している。CGや荒唐無稽アクションも悪くはないが、世の中そ
ればかりだと安直すぎて食傷ぎみになる。今回はCG抜きのアクション映画を堪能し
ました。

 新ボンド役者はダニエル・クレイグ。リアルなスパイ像の造形に成功している。甘
さのないふてぶてしい風貌がいい。それでいてニヤッと笑うと愛嬌がある。『レイヤ
ー・ケーキ』以前にはこの俳優を見すごしていた(『ミュンヘン』など)のが残念に
思えるほど。

 この際、シリーズの古いのは全部燃やしてしまって、いちから新しく作り替えたら
どうかな。



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◎ このあとの、期待していい、のかな?映画
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『王の男』
 12月9日公開(京都) 2006年度作品 イ・ジュンイク監督

 チラシが2種類ある。古いほうは三人の主演者を均等に並べてるだけで、面白そう
な気配はまったくない。新しいのは女形の美形を前面に押し出して、ぐっと色っぽく、
そそるチラシになった(男色の趣味はない)。

 この線で売ると日本でもそれなりにヒットしそうだ。クオリティも高いとのことで、
よさそうです。

 芸人映画というジャンルがあるかどうかは知らないけど、その手のものが僕は好き
です。



『アンノウンUNKNOWN』
 12月23日公開(京都) 2006年度作品 サイモン・ブランド監督

 廃棄工場で意識を取り戻した5人の男。5人とも一時的な記憶喪失に陥っていた。
3人が誘拐犯で2人が人質ということだけ分かっている。自分ははたしてどっち側?
 というミステリーです。

 設定だけが面白いのかもしれないけど、そそる話です。



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◎ 映画雑談……… 2006年の10本
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 各種ベストテンや映画賞に刺激されてしまうようです。今年公開の新作映画10本
を挙げましょう。順位づけしたくないので、観た順で。

 まだ今年は終わってないので、厳密にいうと入れ替えがあるかもしれませんが、こ
んなものはほんのお遊びですから。

 『博士の愛した数式』小泉堯史
 『マンダレイ』ラース・フォン・トリアー
 『ナイロビの蜂』フェルナンド・メイレレス
 『嫌われ松子の一生』中島哲也
 『グエムル 漢江の怪物』ポン・ジュノ
 『紙屋悦子の青春』黒木和雄
 『フラガール』李相日リ・サンイル
 『トンマッコルへようこそ』パク・クァンヒョン
 『虹の女神 Rainbow Song』熊澤尚人
 『007 カジノ・ロワイヤル』マーティン・キャンベル

 他に捨てがたい作品として
 『ディセント』ニール・マーシャル
 『ダメジン』三木聡
 『ルート225』中村義洋
 『幸福のスイッチ』安田真奈
 『トランスポーター2』ルイ・ルテリエ
  などがあります。

 日本映画が半分を占める。珍しいことだ。今後も日本映画の快進撃が続くという保
証はありません。

 『どろろ』の予告篇を何度か見ましたけど、「とほほ」なヴィジュアルです。CG
で映像が薄っぺらくなった以上にキャスティングでミスっている。柴咲コウの「おい
ら、どろろだいっ!」というセリフに、ズルッとコケた。お前のどこをどう見たら少
年に見えるんかいっ!
 ネームヴァリューで俳優を並べたからこういうことになる。どろろは谷村美月か多
部未華子あたりがやる役なのです。百鬼丸も妻夫木聡では凄みが出ない。伊勢谷友介
か、要潤の出番です。原作にネームヴァリューがある場合は、思いきったキャスティ
ングをすべきだ。映画ではキャスティングは、とおっても大事なのです。



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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
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 暮れとか正月は基本的に関係ない生活なのですが、やっぱりこの時期になると一年
をふり返ってしまいます。「たいしたこと、やらなかったなあ」とか「ぜんぜん進歩
がなかったなあ」とか。

 言ってないで何かやればいいんですよね。自分のできることを何か。


「御漫画」12.6 「イラク底なし沼」
「歩きMap」12.6 「瀬田←→文化ゾーン(大津)」
「映画未使用名曲」12.1 アルベニス『スペイン狂詩曲』
「船越屋新製品」11.27 「フィルタリングTV」
「長岡京市立図書館の棚から」11.23 『だれも欲しがらなかったテディベア』
「長岡京市立図書館の棚から」11.18 『これは王国のかぎ』
「じべたでひろたもん」11/18 ラガールカード

『トランスポーター2』‥‥1より面白い、楽しい、スカッとする
『ウルトラヴァイオレット』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥映画が死んでる
『007カジノ・ロワイヤル』CG抜きのアクションが素晴らしい
『7月24日通りのクリスマス』‥‥‥話は面白いのに、モタモタ
『幸福のスイッチ』‥‥空気がよく出ていて、気持ちよく観られる
『トゥモロー・ワールド』‥‥‥‥スリリングで、及第点の映画化
『地下鉄に乗って』‥‥‥‥ちっとも筋が通ってないように見える
『虹の女神』‥‥‥‥‥‥‥‥青春映画の秀作、上野樹里の代表作
『弓』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥少女はなまめかしくて魅力的、だけど
 

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◎ 旧作から……… 『愛を乞うひと』  1998年度作品
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 監督:平山秀幸   原作者:下田治美
 出演者:原田美枝子/野波麻帆/中井貴一/小井沼愛/牛島ゆうき/浅川ちひろ/
國村隼/うじきつよし/小日向文世/熊谷真実/モロ諸岡/マギー司郎/西田尚美/
温水洋一/広岡由里子

 今回は旧作です。この作品の場合、ストーリーを書いても差し支えないと思いまし
たので、概略は書いています。

 原田美枝子の二役合成がどうだったのかが気になって見直しました。ブルーマット
合成みたいです。かすかですけど継ぎ目らしきものが見えました。合成は実に巧みで
す。一部はどうやって嵌め込んでるのか、分からないほどです。

 この映画は特撮部分以外の映像もすばらしい。戦後の時代の空気をよみがえらせた、
きめ細かな美術と撮影の力に敬服します。そして、ドラマはおそろしく苛酷をきわめ
る。娘を虐待し続ける母(原田美枝子)が描かれる。その母を回想する、現在の娘
(同じく原田美枝子)。

 この映画は公開当時、話題を呼びながらも、あまりの熾烈な内容におそれをなした
か、観客動員がまったく伸びなかった。しかし今思うに、この映画ほど、見るに値す
る映画はそう多くないんじゃないだろうか。特にこれから親になる、あるいはなった
ばかりの若い人に観てほしい。

 虐待の原因については映画でも原作でも描かれない。「幼児期に何かあったのでは」
と語られるだけ。娘の幼年期に父母が離婚した事情についても映画は一切描かない。
今回観直して、父親が娘を鬼母から引き離すために別れたように感じられた。しかし
それも父親の病死により、地獄へ逆戻り。その後、自活できるようになってから、娘
は家から逃げる。

 初めて観たときはわりあい冷静に観ていたと思います。今回はうちのめされてしま
いました。自分にとって特別な一本になりました。自分の体験とダブる部分など、な
にもないのに。

 ラストシーンには原作と違って温かなエンドをもうけています。エンドシーンの直
前、何十年ぶりかの再開シーンがある。うらぶれた理髪店を営む母を、一人娘(野波
麻帆)といっしょに訪ね、髪をカットしてもらう。ここが先に書いた合成シーンです。

 お互い、名乗りあうこともなく別れるが、額の傷痕で老いた母は自分の娘であるこ
とに気づいてしまう。ふり返ることなく立ち去っていく娘の背中を必死になって見つ
める母の姿に、心が押しつぶされそうになった。その胸を去来してるであろう膨大な
思いが迫ってくる。

 悔悟はあるのだろう。落ちぶれた自分と違って幸せそうに見える娘に対し、思うこ
とは多いにちがいない。ひと声かけたいと思う。かけられる筋合いではない。おそら
く最初に逃げられたときより、今度のほうが心に大きな痛みを感じただろう。

 観てから一週間以上たつが、このシーンを思い返すたび、涙ぐんでしまう。



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◎ このあとの、期待していい、のかな?映画
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『007 カジノ・ロワイヤル』Casino Royale
 12月1日公開 2006年度作品 監督:マーティン・キャンベル

 今まで007をロードショー館で観たことはありません。価値観やセンスの面で古
くさいのです。 新作ではダニエル・クレイグがボンドを演じます。このダニエル・
クレイグがなんともいい風貌をしてるのです。単に好みの問題かもしれませんが、予
告篇は絶好調です。



『とかげの可愛い嘘』Love Phobia
 12月公開予定 2006年度作品 監督:カン・ジウン

 Love Phobiaというのは「恋愛恐怖症」という意味です。原題は韓国語の「とかげ」
(韓国語は分からない)。それぞれ、タイトルに魅かれます。
 メルヘンちっくな恋物語で、ヒロインはカン・ヘジョン(『トンマッコルへようこ
そ』『オールド・ボーイ』)。また違う役柄に挑戦です。



 今年は日本映画が気を吐いた一年でしたが、このあとはちょっとイマイチで、息切
れしたかな?というかんじ。


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◎ 映画雑話……… いいかげん英語なタイトル の1
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 外国映画のタイトルが日本語に翻訳されるように、日本映画もまた外国語に訳され、
紹介される。ただ、英語タイトルのつけかたは、かなり粗雑に感じられます。内容を
確認もしないで、逐語訳(ひどいときは逐字訳)ですませてる場合が多い。

 具体例です。"Dancing Girls of Izu"。これ、分かります? 伊豆って、地名なんで
すけどね。それすら分からなくて英語に翻訳している。"The Izu Dancer"ってのもあ
ります。こっちのほうがまだまし、ぐらい。
 "Flavor of Green Tea Over Rice"は分かります? 小津安二郎の『お茶漬の味』。
思わず「なめとんのか!」とわめいたで。
 総じて日本語タイトルの微妙な味わいが消され、無味乾燥なタイトルに変更されて
しまっている。英語って、すっごく味気ない言語じゃないかとさえ思えてくる。『吾
輩は猫である』が"I Am a Cat"なんて、暴れたくなる。微妙なニュアンスが吹っ飛んで
る。『二十四の瞳』の"Twenty-Four Eyes"も悲しい。

 『怪談蚊喰鳥』のように"Ghost Story of Kakui Street"と、明らかに誤読したもの
もあれば、『大当り三色娘』を"Big Hit Three Color Daughters"と、わけ分からずに
逐語訳してしまって、さっぱり意味不明になったものもあります。
 内容を誤解したと思えるタイトルに、"Ah! The Beautiful Cheer-Leader Squad!"が
ある。『嗚呼!!花の応援団』。どこが美しいチアリーダーなのか。
 理解不足による誤訳も多い。"Figure Sanshiro"って分かります? これは岡本喜八
監督の『姿三四郎』です。姿って、苗字じゃないのかね。さすがに黒澤明監督のほう
には"Judo Saga"とか、まともなタイトルがつけられてます。Sagaって、嵯峨じゃな
くて英語の「武勇伝」のこと(念のため)。
 逆のミステイクに"Letters from Kanai Nirai"というのもある。『ニライカナイから
の手紙』。それは名前じゃないのっ!
 『第五福竜丸』は"Lucky Dragon No. 5"。核実験の犠牲になる船がラッキーという
のは、ブラックユーモア?
 『平成狸合戦ぽんぽこ』は"The Raccoon War"。なんでアライグマ?と思いました
が、狸は東アジアの動物でした。西欧では狸のかわりはアライグマかアナグマになる
んでしょう。ちなみに狸の英語訳はRaccoon Dog。

 〈つづく〉




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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
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 CINEMAテーブルの発送を完了しています。万一、届いてないという方がおら
れれば、言ってくださいませ。

 今回のCINEMAテーブルはきわめて珍しい傾向が顕著に現われています。日本
映画、それも実写の映画(つまりアニメ以外)が圧倒してるのです。

 評が集中してるのは、『ALWAYS 3丁目の夕日』『フラガール』『THE 有頂
天ホテル』『かもめ食堂』『博士の愛した数式』『嫌われ松子の一生』『紙屋悦子の
青春』『ゆれる』あたり。外国映画である程度評が集まってるのは『ブロークバック
・マウンテン』『ホテル・ルワンダ』『ミュンヘン』ぐらいです。ハリウッドの娯楽
映画が見事にスポイルされています。面白い傾向ですね。


『トゥモロー・ワールド』‥‥‥‥スリリングで、及第点の映画化
『地下鉄に乗って』‥‥‥‥ちっとも筋が通ってないように見える
『虹の女神』‥‥‥‥‥‥‥‥青春映画の秀作、上野樹里の代表作
『弓』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥少女はなまめかしくて魅力的、だけど
『愛を乞うひと』(rental)‥‥‥‥再見して、うちのめされました
『山村浩二セレクト』‥‥‥パテルの『ビーズゲーム』は最高傑作
『年をとった鰐』‥‥‥‥‥‥‥‥‥ワニくんは幸せだったのかな
『パビリオン山椒魚』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥学芸会未満
『トンマッコルへようこそ』ファンタジックできらめくような傑作
『父親たちの星条旗』‥‥‥‥‥‥‥イーストウッドとしては凡庸
『レイヤー・ケーキ』‥‥‥‥‥リアルな英国マフィア映画の秀作
『ダーク・ブルー』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥話を絞り込めてたら秀作
『ゴーヤーちゃんぷるー』‥‥‥‥多部未華子の瞳の輝きに尽きる
『父と暮せば』‥‥‥‥‥‥シチュエーションに頼って工夫がない
『グッドナイト&グッドラック』‥‥‥‥‥テレビ局はまさに戦場
『TOMORROW 明日』‥‥‥やはり『紙屋〜』よりはぐっと格落ち
『フラガール』‥‥元気いっぱいの日本映画、大ヒットをめざせ!
このあとは『007カジノ・ロワイヤル』に期待
 

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 極 ┃     ┃ 2006.11.4
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No.┃      ┃不定期刊
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◎ 公開中の新作から………『トンマッコルへようこそ』 Welcome to Dongmakgol
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 監督:パク・クァンヒョン  2005年度作品
 出演者:シン・ハギュン、チョン・ジェヨン、カン・ヘジョン、イム・ハリョン、
ソ・ジェギョン、チョン・ジェジン、リュ・ドックァン、ソ・ジェギョン、ほか

 CINEMAテーブルは順調に編集が進んでます。『トンマッコルへようこそ』は
誰も書いてこないので、今年度の号に掲載するのを見送ります。その代わりというメ
ルマガです。こんなことやってる余裕あるのか、と言われそうですが、なくても出し
ます。

 ネタバレは避けるように書きますが、結末がひょっとしたら分かってしまうかもし
れません。その点はご了承ください。

 大きな寓話に抱かれたような心地で、映画が終わってもなかなか席を立てませんで
した。入れ替え制なのでしかたなく、気持ちのいい涙をかかえこんだまま、渋々劇場
を出ました。

 トンマッコルは韓国の山の中の僻村です。「子供みたいに純粋な村」という意味だ
そうです。漢字表記は最初の「童」しか分かりません。

 時は朝鮮戦争の真っ最中ですが、トンマッコルの民は戦争中だということさえ知り
ません。戦争も武器も何も知らない平和な村です。そんな村に米兵一人、韓国軍兵士
二人、北朝鮮軍兵士三人が迷い込む。

 出会った南北両軍兵士が緊張して向かい合い、銃器を突きつけているその真ん中で、
村人たちはのんきにトウモロコシ畑のイノシシ被害を深刻そうに話し合っている。こ
ういった、西洋の映画にないアジア独自のベタな笑いは、好きです。

 兵士たちは、双方いがみあいながらもトンマッコルに滞在し、その間に彼らのカチ
コチの硬い心は、村人たちの優しい心根にじわじわと溶かされていく。村人の心の中
にこそ、彼ら兵士たちがほんとうに守るべきものがあるということに気づかされてい
くのだ。

 拘束した連合軍兵士から、村周辺の山地が爆撃されるという情報を得た彼らは、協
力して村を守る決意をする。「国を守る」という、戦争の名目的大義を捨て、自分た
ちが信じ愛するものを守るために戦う。人生の中で守るべきものを見つけ出した彼ら
は幸せだった。満足そうな笑みをラストで見せてくれた。


 『フラガール』が好きな人はたぶんこの映画も楽しめます。ほどよく洗練されつつ
も、アジア的ベタな笑いと涙のある映画を好きな人は、楽しめると思います。


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◎ このあとの、期待していい、のかな?映画
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『弓』Hwal / The Bow
 2005年度作品 監督:キム・ギドク

 キム・ギドクは韓国には珍しいアート系の監督。楽しい映画を作ってくれないとい
う印象がありすぎて、これまで全部パスしてた。
 『弓』は雰囲気が違う。しかし甘い期待は持たないようにしよう。痛い映画かもし
れない。



『年をとった鰐』The Old Crocodile
 2006年度作品 監督:山村浩二 13分短編アニメ

 実は併映の短編を観たいのだ。『年をとった鰐』がスカだったとしても、他の7本
の短編で入場料の元は取れそう。中でもイシュ・パテルの『ビーズゲーム』(カナダ、
実体アニメ)は必見と思う。シンプルで明解なメッセージは強い。



『ラブいぬベンジー はじめての冒険』Benji: Off the Leash!
 2004年度作品 監督:ジョー・キャンプ

 近しい人は僕が犬好き犬バカなのを知ってると思う。犬が出てるというだけで、こ
ういうドB級なのまでフラフラッと観てしまいそうで、おそろしい。好みの犬種では
ないんだけどね。 チラシを眺めてると、「わりと面白そうかな」という気になって
くるのがおそろしい。



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◎ 映画雑話……… 映画人の名前、お国でいろいろ
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 オドレイ・トトゥとオードリー・ヘプバーン、同名だってこと、知ってます? 
Audreyは英語もフランス語も同じスペルです。

 このように、国によって読み方の違う同名、あるいは同系の名前はたくさんありま
す。ちなみにヘプバーンHepburnは、ヘボン式ローマ字のヘボンと同じです。

 イングマル・ベルイマンIngmar Bergman(監督)とイングリッド・バーグマン
Ingrid Bergman。ともにスウェーデン人だけど、バーグマンは米国へ行ったので米国
読みになっている。ともにファーストネームに豊穣神インゲIngを含んでいるのは面白
い一致。ちなみにBergmanはスウェーデン語では「山地の住民」となる。

 ロバート・デ・ニーロRobert De Niroのロバートは英語で、本来のイタリア語なら
ロベルトです。ロベルト・ベニーニRoberto Benigniという人がいます。ロバートが
フランス語になるとロベールRobert。ロベール・オッセンというオッサンがいます。

 チャールズ・チャプリンのチャールズCharlesは、フランス語ならシャルル
Charles。俳優にヴァネルやボワイエがいます。ドイツ語はカール。チェコではカレ
ル(チャペックがいる)。イタリア語とスペイン語はカルロスです。

 ヴィンセント・プライスなどのヴィンセントVincentは、フランス語でスペルはそ
のままのヴァンサンVincentとなります(カッセルがいる)。

 他にキャサリンCatherine(ヘプバーン)とフランス語のカトリーヌCatherine(ド
ヌーヴ)。ちょっとスペル違いなら、ヘンリーHenry(フォンダ)とフランス語のア
ンリHenri(ヴェルヌイユ)、マイケルMichael(ダグラス)とミシェルMichel(ピコ
リ)というのがあります。

 外国人の名前を見たら、これは別言語ならどうなるのかな?と頭をめぐらせてみる
のも面白いもんですよ。



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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
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 テレビが映りません。アンテナ線の接続異状らしいのですが、いまだに解決せず。
 修理に来てもらえば一発で直るんでしょうけど、そもそもテレビをほとんど見てな
い生活なので、この際やめにしても、と思ったりする。

 映画と音楽、ニュースやスポーツなどを見れないのはちょっと寂しいですが、しば
らくはこのままでいきましょう。


『トンマッコルへようこそ』ファンタジックできらめくような傑作
『父親たちの星条旗』‥‥‥‥‥‥‥イーストウッドとしては凡庸
『レイヤー・ケーキ』‥‥‥‥‥リアルな英国マフィア映画の秀作
『ダーク・ブルー』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥話を絞り込めてたら秀作
『ゴーヤーちゃんぷるー』‥‥‥‥多部未華子の瞳の輝きに尽きる
『父と暮せば』‥‥‥‥‥‥シチュエーションに頼って工夫がない
『グッドナイト&グッドラック』‥‥‥‥‥テレビ局はまさに戦場
『TOMORROW 明日』‥‥‥やはり『紙屋〜』よりはぐっと格落ち
『フラガール』‥‥元気いっぱいの日本映画、大ヒットをめざせ!
 

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 映画不作の夏から豊作の秋へと季節が移って、忙しくなりました。勝手に忙しがっ
てるだけですが。呑気なもんですね。

 作品的には豊作の気配ですが、興行的には9月から厳しくなってるようです。今年
初めから夏場までの大ヒットつるべ落としで、映画疲れが出たのでしょうか。期待さ
れた『グエムル』も不発に終わりました(『UDON』に敗れるようでは…)。


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◎ 公開中の新作から……『フラガール』2006年度作品 監督:李相日リ・サンイル
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 「泣く」と言われてました。泣くかも、と思ったら、やっぱり泣いてしまいました
(笑)。

 直球な映画で、パターンから外れませんが、各人物のエピソードのからませ方が生
きてるのです。単純なパターン映画ではありません。人物の厚みの分だけ映画に厚み
が出ています。

 ストーリーは英国の『リトル・ダンサー』に似ています。真似たかな?と思えるシ
ーンもちらほら。

 昭和30年、福島県の斜陽の炭鉱町に、町の立て直しをめざした観光施設として常
磐ハワイアンセンターが作られた。そこでフラダンスを踊る女たちの物語です。ド素
人で年齢もまちまちな炭鉱町の女たちが、町のため、自分のために立ち上がろうとす
る。

 ラストシーンの蒼井優の泣き笑いのアップはとても素敵ですが、踊り終えたダンサ
ーたちの勝ち誇った笑顔の輝きもよかった。美形がいない(蒼井は別にして)という
ところもまた、普通っぽくていいのです。

 観終わって、じっと座って観てただけのはずなのに(踊ってません!)、全身に汗
をかいていました。映画全体が放つ熱気にあおられたようです。この映画、熱い!!

 劇場を出ようとして、米国アカデミー賞の外国語映画部門の日本代表に選ばれたと
いうお知らせを見た。まだノミネートまでいかない。ノミネートは来年の1月23日
だ。今年の元気いっぱいな日本映画。代表選手としての健闘を祈る。


 他の出演者は、松雪泰子、豊川悦司、山崎静代、池津祥子、徳永えり、三宅弘城、
寺島進、志賀勝、高橋克実、岸部一徳、富司純子。


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◎ このあとの、期待していい、のかな?映画
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『トゥモロー・ワールド』Children of Men
 公開日未定 2006年度作品 監督:アルフォンソ・キュアロン

 映画館を出た時、巨大ポスターのコピーが目に入った。「2027年 子供が誕生
しない未来」。これって、P・D・ジェイムスの『人類の子供たち』じゃないか。と
思ってポスターにツツツと寄った。あのSFサスペンスがついに映画化されたんだ。

 主演はクライヴ・オーウェンにジュリアン・ムーア、マイケル・ケイン。まずは期
待しておきましょう。



『トンマッコルへようこそ』Welcome to Dongmakgol
 10月28日公開 2005年度作品 監督:パク・クァンヒョン

 朝鮮戦争の真っ最中だってことも知らない、のんびりとした平和な村のお話。役者
は『オールドボーイ』のカン・ヘジョンしか知りません(シン・ハギュンもおった
か)。韓国映画には珍しいファンタジックなお伽噺という雰囲気です。


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◎ 雑話……… 名は体を表す人・表さない人
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 欧米の名前はほとんど意味や由来があります。勝手に新しい名前を創作することが
許されているのは日本だけです。法律で禁止されているわけではなく、いわゆる慣習
法。新しい名前を作れないのです(例外はあり)。

 映画人の名前も(芸名も)、由来があります。
 名は体を表す、の代表はシルヴェスター・スタローンでしょう。Sylvesterの由来は
ラテン語の「粗野な、無骨な、未開の」のsilvesterからということです。Stalloneは
英語の「種馬 stallion」からではないかと推測してます。これ以上ぴったりな名前は
ないんじゃないかな。
 スティーヴン・スピルバーグSteven Spielbergは、spielが「雄弁、客引き、大げさ
な演説」を意味して、なるほどと思わせる。bergは「城市、山」です。
 ジョン・ウェインJohn WayneのWayneは、古英語の「荷馬車」を意味するそうで
す。イメージぴったりですね。
 ジョン・ウォーターズのJohnは聖書のヨハネJohnに由来してるが、この人の場合
は米俗語の「便所John」がふさわしいように思える。Watersは水にSがついたもの。
「便所の水」だ。この人は最低映画『ピンク・フラミンゴ』を撮った映画監督だ。
 ちなみにWatersのSは複数のSではない。息子sonの略だそうだ。だからスティーヴ
ンスStevensはスティーヴンの息子。ハリソンHarrisonのson、ヨハンソンJohansson
のsson、ヘンリクセンHenriksenのsenも息子の意。マクドナルドMacDonaldのMac、
マッカーシーMcCarthyのMcもそう。いずれもファーストネーム+息子から生まれた
苗字だ。
 ではドノフリオD'OnofrioやダンジェロD'AngeloのD'は娘daughterの略だろうか。
残念ながらそうではない。フランス語のde(英語のofに相当する)の略だ。アンジェ
ロさんのなんとかさん、というわけ。アンジェロAngeloは天使Angelの男性形です。

 名は体を表さないの代表はアーノルド・シュワルツェネッガーかな。
Schwarzeneggerが独語で「黒いschwarze」と「黒人neger」の合成になるらしい。
浅黒いが、いちおう白人だよね。
 テリー・ギリアムのTerryはテレサTeresaという女性名からの転用で、Gilliamも女
性名ジリアンGillianの転用らしい。女らしいところなど、どこにもない、いかついオッ
サンですが。
 昔は俳優もやっていたアーサー・ガーファンクルは、Garfunkelが独語で「まった
くgar」と「真新しいfunkel」の合成。カトリーヌ・ドヌーヴDeneuveは、neuveが
仏語で「新しい」。deは「〜の」。まあ二人とも、デビューした当時は「まったく真
新し」かったんでしょうけどね。

 などなど、名前の由来ネタを続けたいが長くなってしまう。サイトには由来の辞典
ページがあります。そこから拾った話ばかりですから、一度のぞいてみてください。
 https://funakoshiya.net/persons/jinmei.htm



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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
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 一か月後はCINEMAテーブルの編集の真っ最中です。短評原稿を依頼した方々
へのご注意ですが、〆切は今月末ですので、お忘れなく。


「長岡京市立図書館の棚から」10.1 『ルート225』
「映画未使用名曲」10.1 『ルドヴィコ流のハープを模したファンタジア』
「歩きMap」9/25 清水寺←|将軍塚|→粟田口(東山)
「シネ漫コラム」9/11『南極物語』
「風光明媚」8.19 「男山の住宅街」
「日本映画の外国語タイトル表記DB」8.13 新規

『フラガール』‥‥元気いっぱいの日本映画、大ヒットをめざせ!
『夜のピクニック』‥この話で一本の映画というのに無理あった?
『出口のない海』‥‥‥‥‥‥佐々部清は演出センスが古いのです
『ダメジン』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥爆笑のダメジンワールド全開!
『日本以外全部沈没』‥‥‥‥‥まったくのC級でお話にならない
『真昼ノ星空』‥‥‥‥‥‥‥‥デビューの香椎由宇に大物の気配
『バッシング』‥‥‥‥思うところは多いんですが、映画は不出来
『皇帝の鶯』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥退屈して寝てしまいました
『真夏の夜の夢』‥‥‥‥アニメの人形が美しいというか、エロい
『ルート225』‥‥‥‥‥‥面白い、二人の子役の力がすごい!
『グエムル 漢江の怪物』‥‥‥‥‥‥‥面白かった、楽しかった
『マッチポイント』‥‥意外や、トム・リプリーふうのサスペンス
『紙屋悦子の青春』‥‥‥‥‥‥泣きました。すばらしい遺作です
このあとは『年をとった鰐』に期待
 

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◎ 公開中の新作から……… 『紙屋悦子の青春』 2006年度作品 監督:黒木和雄
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 第二次大戦の末期、鹿児島の田舎町の娘の、秘めた恋の物語です。

 観ているうちに分かってきたのだけど、この映画は、見える形を極限までシンプル
に削りこんで作っている。俳優はたった5人。セットは一つ。カメラはセットから出
ず、外の景色も映さない。病院の屋上シーンがあるが、そこでも外界を映さない。

 日常の食事などのシーンをきめ細かく描いてるのだが、まるで日常生活じたいがド
ラマのようで、騒々しく、可笑しい。

 作り手は意識的によけいなものをそぎ落とし、無名の個人の生活に光を当てている。
舞台装置が極限まで小さく作られているのは、個人の内面の奥行きの深さ広さを際立
たせるためなのではなかろうか。紙屋悦子は本音をなかなか見せない。彼女がそれま
で抑えていたものが一気に噴出するシーンで、溺れるように映画に呑み込まれた。ち
いさな一個人の大きさを見た気がした。

 黒木和雄は初期の作品(『日本の悪霊』『竜馬暗殺』『祭りの準備』)が好きで、
その後の作品には失望させられていたんです。ですから最近の映画は観てませんでし
た。今ごろになって、昨年の『父と暮せば』が無性に観たくなってきた。

 原田知世(紙屋悦子)の義姉を演じる本上まなみのことは、映画を観るまで何も知
らなかった。原田とは対照的なポジションで、ポジティヴではつらつとしてて、いか
にも楽しそうに演じてるのが見てて気持ちいい。夫役でベテランの小林薫相手に、一
歩も引けを取らずに丁々発止のやりとりを続けているのが面白くてならない。

 黒木和雄の映画を観て涙を流したのは他に記憶がないが、彼の映画であんなに笑い
転げたのもまた初めてだった。いい映画が最後になって、よかった。


 他の出演者は、永瀬正敏、松岡俊介。


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◎ このあとの、期待していい、のかな?映画
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『出口のない海』
 佐々部清監督 9月16日公開 2006年度作品

 人間魚雷「回天」を描いた映画が過去にあったのかどうかは知らない。神風特攻機
と同様、あまりにも非人間的なこの兵器をどんなふうに描いてるのか、どうにも気に
なる。



『フラガール』 李相日監督 9月23日公開 2006年度作品

 この映画はフラダンスを、迫力をもって描けてるかどうかが勝負の分かれ目。『リ
ロ&スティッチ』の残像が頭に残ってるだけに、難しい。予告篇ではそのへん、分か
りませんでした。


 今年は日本映画の秀作が相次ぐので、どうしてもそっちに目がいってしまいます。


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◎ 映画雑談……… 3Dチラシ
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 映画とは直接関係ない話です。

 映画のチラシを資料として大量に持っています。天眼鏡でそれらの細かい文字を拾
うことはしょっちゅうあります。中には、よくぞこんな細かい字を印刷したものだと
感心することがあります。というか、いくら拡大したって文字の体をなしていないの
がある。

 朱赤の文字を天眼鏡で見るとチラシから浮き上がって見える現象は、以前から把握
してました。文字だけではなく、朱赤で印刷してある部分はすべて浮き上がって見え
る。同一の画像を左右の目で見ても立体視にならないものです。それだけに、不思議
でなりませんでした。

 新聞写真やCDケースの印刷など、他のものでも試しました。表面がツルッとした
もののほうが現象は出やすいようです。虫眼鏡はだめでした。大型の天眼鏡でないと
効果は現われないようです。

 天眼鏡をチラシから10センチあまり離さないとだめなのも分かりました。どうや
ら色による屈折率の違いが影響してるようです。左右の目で見えるものの違いは、天
眼鏡のレンズの両端なのです。レンズの厚みの傾斜が左右で逆になっている。朱赤の
色部分は右と左では逆方向にわずか、ぶれて見えているということみたいです。

 これでも100%納得してるわけではありません。なぜ朱赤だけなのか。赤茶や灰
赤、ピンクっぽい赤では同じ現象が起きません。また、可視光線では最も波長の短い
紫はどうなのか。チラシにはあまり紫を使ってませんが、引っ込んで見えるといった
現象は明確には出ません。そもそも紫という色は黒っぽく濃い色ですから、錯視で引っ
込んで見えてしまうものです。

 ただし、屈折率の大きい赤が内側にぶれ、それによって近くに感じられるというの
は理論的に正しいことですから、原因としてはそれしか考えられませんね。

 もし手元に幅10センチ程度の天眼鏡があったら試してみてください。面白いよう
に浮いて見えますよ。こんなどうでもいいヒマなことに時間を使う人、だれもいない
ですか。



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 あとがきのかわりに……… 
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 毎年CINEMAテーブルの短評をお願いしてる方へは、先週、募集要項を送りま
した。よろしく。


「シネ漫コラム」9/11『南極物語』
「映画未使用名曲」9.1  メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲2番
「風光明媚」8.19 「男山の住宅街」

『マッチポイント』‥‥意外や、トム・リプリーふうのサスペンス
『紙屋悦子の青春』‥‥‥‥‥‥泣きました。すばらしい遺作です
『南極物語』(新作)‥‥‥しょせんディズニーの動物映画でした
『ユナイテッド93』‥‥‥‥‥‥‥‥‥もうちょっとメリハリを
『時をかける少女』(新作)むちゃくちゃノリのいいアニメで推薦
 

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 2か月も発行してないので、「ひょっとして送付先から外された?」と思った方は、
たぶんおられないでしょう。届いてから「そういや、こんなメルマガもあったっけ」
ぐらいが関の山です。

 1号で『ナイロビの蜂』、2号で『嫌われ松子の一生』と、Aクラスの映画が続い
たので、次が出しづらかった。春は秀作連打でしたけど、夏場は夏枯れで、まあまあ
か、ハズレばかりでした。

 忘却の果てに追いやられる前に、とりあえず発行します。

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◎ 公開中の新作から……… 『ディセント』  2005年度作品
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 監督:ニール・マーシャル

 『エミリー・ローズ』は観逃したけど、『サイレントヒル』『ディセント』と、ホ
ラー映画の秀作が続く。

 まったく違う作品なのに、共通点の多いことに気づきました。サウンドと映像処理
のセンスのよさが際立つ二作です。B級ホラーのように白けたり失笑したりのノイズ
が入らず、作品と向き合えるのはありがたい。

 ともに、あるゾーンに迷い込み、脱出しようとするストーリーです。ほとんど女性
キャストのみで話が進行する点も同じ。集客力のあるスターが出ていない点も同じ。

 ネタバレを避けるために書けない部分でも共通するポイントがあります。エンディ
ングはハリウッド大作のメデタシメデタシのハッピーエンドになってない点まで共通
している。しかしテイストはまるで違う。『サイレントヒル』は純粋に観客の立場で、
距離を置いて見ていられる。『ディセント』にはその距離感がほとんどない。

 6人の女性ばかりのグループが洞窟探検に来て、土砂崩れで通路をふさがれ、巨大
な地下迷路で迷ってしまう、という話です。終わったとたん、ホーーッと大きな息を
吐いた。間近に起こっている出来事を、息を殺してひたすら見つめていた、という感
じなのです。

 閉所恐怖症の人は絶対見ていられない。人間の体がかろうじてすり抜けられるよう
な細い穴をえんえんと這っていくのですから。恐怖の仕掛けあれこれについてはルー
ル違反なので一切書きません。一見の価値あるサスペンシャルなホラー映画ですよ。

 しかしこの映画、宣伝のためとはいえ、富士急ハイランドのケイヴィングコースな
どとタイアップしている。この映画観てケイヴィングしたくなる人、いる? 絶対タ
イアップのしかたを間違えてると思う。


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◎ このあとの、目玉映画………と言えるか?
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『夜のピクニック』
 2006年度作品 監督:長澤雅彦

 第2回本屋大賞を受賞した恩田睦の同名小説の映画化、ということはどうでもよく
て、多部未華子(『HINOKIO』『ルート225』)主演の映画。青少年が夜を
徹して80キロを歩く「歩行祭」を舞台とした青春映画です。

 若手俳優がてんこもりです。男のほうはどうでもいいけど、女優は気になる人が多
い。近年の日本の若手女優の充実ぶりは嬉しいかぎり。おかげで本数が増えて増えて
……。



『グエムル 漢江の怪物』
 9月2日公開 2006年度作品

 一作ごとに作風ががらっと変わるポン・ジュノ監督(『ほえる犬は噛まない』『殺
人の追憶』)の新作。

 特に何も書きませんが、今秋最大の期待作の一つです。


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◎ 映画雑談……… 観れなかった映画
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『インサイド・マン』
 選択ミスなどがあって、観逃した。いまだ悔いが残る。

『ハイジ』
 従来の型を破るかと期待したら、劇場予告で思惑外れが判明。

『ウルトラヴァイオレット』
 ヒロインが活躍する似たような未来SFが続きすぎて目移りして。

『ククーシュカ ラップランドの妖精』
 妖精って、あのヒロインのことじゃないと思いたいが・・。

『花よりもなほ』
 ちょっと面白そうだけど、それだけという印象。

『笑う大天使』
 これはどう考えてもハズレやろ、と、観に行く直前に判断。

『間宮兄弟』
 行ったら満席でした。再公開は?



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◎ 雑話……… 『ダ・ヴィンチ・コード』
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 ベストセラー本を読まない僕ですけど、ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』
を読みました。なかなか面白いミステリーでした。

 でもこれがどうして世界的な大ベストセラーになったのか、よく分かりません。偽
善の塊のようなカトリックの過去について、あまり明るくない一般読者に分かりやす
く解説し、それをうまくストーリーに組み込んだのは評価できます。ひょっとして、
その部分が衝撃的だったのかな?

 カトリック教会は一部の国で圧力をかけて、出版と映画の公開を握りつぶしてるよ
うに見えます。下手に動くとかえって事態を悪化させるだけの民主主義国家では沈黙
し、中国のような独裁国家では政府に圧力をかけてつぶす。というようなことを、お
そらく裏でやってるのでしょう。

 もう読み返すことはないので処分しようと思います。古本屋へ持っていっても千円
にもならないでしょうけどね。読みたいと言われる方がおられたら格安でお譲りしま
しょうか。文庫本上中下3冊で1740円でしたが、送料込みで千円ではどうでしょ
うか。切手なら額面百円までの切手。それ以外の金券は、たいがいはOKと思います。

 映画版は観る気がありません。演出がロン・ハワードですから。トム・ハンクス以
外の配役は魅力的ですね。主演がクライヴ・オーウェンかエドワード・ノートンなら
気持ちが動いたかもしれません。ジョニー・デップでもよかったと思いますよ。彼と
オドレイ・トトゥとの共演なら、いいペアになりそう。


「日本映画の外国語タイトル表記DB」8.13 新規
「映画未使用名曲」8.1  『小さく美しい女 Lilla Vaekra』
「ボツ画」7.18 「何かを?」
「船越屋新製品」7.10 「ゴキ返しのゴミ箱」
「御漫画」7.7 「イケイケテポドン」
「映画未使用名曲」7.1  『月の庭』と『妖精の王』
「極楽貧乏」6.28 「テポドンドン!」
「船越屋新製品」6.6 「安眠・快眠・熟睡ふとん」
「じべたでひろたもん」6.3 「青いリュック」
「シネ漫コラム」5.25『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』

『ディセント』終わった瞬間、緊張が解けてホッとした怖いホラー
『春の日のクマは好きですか?』‥‥‥‥‥‥‥演出にキレがない
『ハチミツとクローバー』‥‥‥女の子二人のキャラがすごくいい
『サイレントヒル』‥‥‥コケオドシ抜きの本格的なホラーでした
『ローズ・イン・タイドランド』‥‥‥子役のプロモーション映画
『春が来れば』‥‥‥‥‥‥派手さはないが、しっとりとした佳作
『使者の書』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥川本喜八郎は、終わりました
『初恋』‥‥‥‥‥宮崎あおいを除いて若手俳優たちに魅力がない
『やわらかい生活』‥‥‥‥‥‥こなれた映像空間でひたすら没頭
『山の音』‥‥‥‥‥‥‥‥‥しっとりとした家族のドラマの秀作
このあとは『グエムル 漢江の怪物』に期待
 

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◎ 公開中の新作から………  『嫌われ松子の一生』  2006年度作品
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 山田宗樹の原作を、『下妻物語』の中島哲也監督が脚本を書き、演出した。転落人
生の松子を演じるのは中谷美紀(と、子役の奥ノ矢佳奈)。

 笑えるという触れ込みではなかったか。笑えなかった。泣いてしまった。心の奥底
のどこかを突き刺すような痛みもあった。

 それにしても、ぶきっちょな生き方だ。賢い生き方はいくらでもあったろうに。ぶ
きっちょというのは、はたから見てるから言えることだ。本人は一所懸命。あれ以上
はない、精一杯の生き方をしている、つもりなのだ。

 そもそも人間は賢い生き方なんてできる生き物だろうか。じたばたと無駄にあがく
ばかり。自分の立ち位置が客観的に見えてないから、「ああすれば、もっとうまくや
れるのに」なんて、分かりっこない。松子の悲しみと悔悟はすべての人に共有できる
ものだと思う。

 川尻松子に自分とダブる部分があるのかどうか、よく分からなかった。肉親と切り
離された環境は似てるといえる。僕の場合は自分から切ったに等しいが、松子は家族
から「二度と帰って来んな!」「家に近づくな」と言われ、拒絶される。松子が故郷
の福岡の川に似た荒川べりに座り込み、しばしば泣いていたという話は、心揺さぶら
れるものがある。気持ちというものは、完全にふっ切れるものではない。

 突き放してケラケラ笑い飛ばせる映画ではなかった。余韻にひたりたい映画とは逆
に、映画から逃避したくなって、映画館を出た。


 他の共演者は、瑛太、香川照之、市川実日子、柄本明、黒沢あすか、伊勢谷友介、
荒川良々、宮藤官九郎、武田真治、木野花、木村カエラ、渡辺哲、山下容莉枝、山田
花子、蒼井そら、片平なぎさ、本田博太郎、嶋田久作、あき竹城、木下ほうか、マギ
ー、柴咲コウ、甲本雅裕、劇団ひとり、Bonnie Pink、濱田マリ、山本浩司、AIほか。
 エキストラに、土屋アンナ、ほか。


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◎ このあとの、期待していい、のかな?映画
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『ローズ・イン・タイドランド』
 7月ミニシアター系公開(京都は22日公開) 2005年度作品

 テリー・ギリアム監督の最新作。『不思議の国のアリス』を下敷きにしてるとのこ
と。ギリアム+アリスは相性がよさそう。ギリアム+グリム(『ブラザーズ・グリ
ム』)はそこそこのものでしたけど。

 主演はカナダのジョデル・フェルランド。現在11歳ですが、すでに5本の映画に
出ています。ホラーかそれ系の映画がほとんど(『サイレントヒル』など)というの
は変わった経歴です。チラシ写真からは、可愛らしいというより、妙な色気を感じさ
せます。



『ハイジ』
 7月ミニシアター系公開 2005年度作品 ポール・マーカス監督

 『イン・アメリカ 三つの小さな願いごと』(ジム・シェリダン監督、2003年)は
大推薦の映画ですが、主演の一人、エマ・ボルジャー(アイルランド出身)がハイジ
をやります。ジョデル・フェルランドよりさらに若い10歳。『イン・アメリカ〜』
での彼女は演技センスのよさを感じさせ、将来に期待させるものがありました。

 おじいさん役はスウェーデンの名優、マックス・フォン・シドー。この配役だけで
「わぉ!スゲー」と盛り上がってしまいます。ちなみにロッテンマイヤーさんはジェ
ラルディン・チャプリン。



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◎ 映画雑談……… ラブコメの女王、今いずこ
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 かつてのラブコメの二大スター、メグ・ライアンとジュリア・ロバーツは最近、ど
ないしてるんでしょう。彼女らの人気が凋落したあと、ラブコメの女王を継ぐ人が現
われません。だれか「われこそは!」と名乗りを挙げる人はいないのでしょうか。そ
れとも、今どきラブコメなんてのは古いのかな。

 だれも名乗らないならこちらから指名しましょうか。オドレイ・トトゥはどうでしょ
う。キュートな顔立ちですし、その気になればできる人ですけど、役柄の幅広さがか
えってネックになりそう。要するにラブコメだけではもったいないということ。

 ハル・ベリーはどうでしょうか。最近ちょっとヒマそうですから、やらせてみては
どうか。表情演技の大きいとこがコメディ向きに見えます。

 実を言うとジョディ・フォスターのラブコメ、なんてのもいいと思ってます。最近
の映画では肩をいからせるような演技が目につくので、たまには能天気な映画に出て、
体をほぐしてもらったほうがいいんですよ。

 それにしてもメグ・ライアンとジュリア・ロバーツはどこへ行ったのか。実は二人
ともちゃんと女優としての仕事をしております。メグ・ライアンは、実在のボクシン
グプロモーターを演じる『Against the Ropes』(2004年)がある。以後は今のとこ
ろ主演作の予定なし。

 ジュリア・ロバーツは今年公開の『シャーロットのおくりもの』があります。実写
の映画化ですが、CGキャラクター(シャーロット=クモのおばさん)で、声のみで
す。E・B・ホワイト原作で、1972年にはハンナ&バーベラ・プロによるアニメ化も
あります。ジュリアはクモよりカマキリのほうが似合いそうだなどと、どうでもいい
ことを考えてしまう。

 ジュリア・ロバーツはこのほか、もう一本今年公開予定がありますが、アニメ。す
ぱっと声優に転向。というわけではないようですけれど。



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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… ファンド
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 村上さんの逮捕で何かと取り沙汰されることが増えたファンドですが、いちおう僕
も預けてます。村上にではなく、三菱ですけどね。

 先週、雀の涙の利息しかない郵便局定額貯金を全部解約して、三菱UFJ信託銀行
で投資信託の運用にまわしてしまいました。直後に村上逮捕が報じられ、オッと思い
ましたが、影響はほとんどなさそうで胸をなでおろしました。

 経済や金融や証券に関して、世間の平均よりは知識があるというものの、それでも
僕はプロから見ればドのつく素人。なので、株はやりません。買ったことありません。
為替や株式指数に関して何も知らない人までがどんどん株式市場に参入してきてるの
は、僕から見れば無謀にすぎます。鴨がネギしょってる状態ですよ。

 運不運の世界ですから、そりゃあ株でもうける人も中にはいますよ。それはパチン
コや競馬、宝くじと同じです。もうかる人はいても、トータルでは客は赤字です。株
式の世界は、賭場を開帳してる側(証券会社)とプロに貢ぐための場です。参入する
人が多くなればなるほど、ファンド利用者としてはありがたいというべきなのかもし
れません。

 投資信託(ファンド)というのは、預かった資金を、各種金融資産を使い、価格変
動と高利息商品で利益をあげ、預けた人に還元するものです。プロのファンドマネー
ジャーが運用してくれます。素人が為替や株式の数値と毎日にらめっこしなくてもい
いので、楽です。というか、そういうことはプロにまかせたほうがいい。

 ファンドにはいろんな種類があり、いろんな性格のものがあります。株式のみ、債
券のみ、両方を組み合わせたもの、不動産を扱うもの。それらの海外のものと国内の
ものと、いろいろ。預けるときに手数料を取られる(2%前後、銘柄により)ほか、
年間に1%前後の運用報酬を支払う必要があります。さらに税金もあるので、+3%
以下しかあがらないようなファンドはクズです。

 先々、多少円高傾向が強まるという見通しを僕は立てているので、選択は難しいも
のがありました。一本にするとリスクが高くなるので分散してます。国内株・海外債
券(為替ヘッジなし)・欧州株に三分割。決めたものの、これでいいのかどうか、まっ
たく自信はありません。

 ヘッジていうのは分かりやすく言うと、自分が負けるという予想に賭け金を張る、
みたいなことで、変動リスクを緩和するためのものです。分散することで変動を緩和
してるので、ヘッジなしとしました。

 状況を見ながら、5年以上を目安にして銘柄を入れ替えようと考えてます。僕とし
ては年に2%でも利益があればなあと思うけど、さて、吉と出るか、クズと出るか?


「船越屋新製品」6.6 「安眠・快眠・熟睡ふとん」
「じべたでひろたもん」6.3 「青いリュック」
「映画未使用名曲」6.1 更新 『動物の謝肉祭』の「ピアニスト」
「シネ漫コラム」5.25『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』
「山歩き・里歩きMap」5.18「鴨川←|西高瀬川|→東寺」
「シネ漫コラム」5.16『シムソンズ』
「シネ漫コラム」5.9『マンダレイ』

『嫌われ松子の一生』‥‥人ごとに見えず、没入してしまいました
『プロデューサーズ』(旧作)‥‥‥‥‥‥‥‥新作よりは好印象
『ニュー・ワールド』‥‥‥‥マリックの詩的映像世界を評価する
『ナイロビの蜂』心を語る映像の力、CG抜きの映像は素晴らしい
『シムソンズ』‥‥‥‥‥‥‥カーリングのシーンがゾクゾク興奮
『レント』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥まったく入れない
『プロデューサーズ』(新作)‥‥‥‥観て損した気分になります
『運命じゃない人』‥‥‥‥‥‥‥‥観ておトクな気分になれます
『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』堂々たる風格の名作
『かもめ食堂』‥‥‥‥‥‥‥‥‥まったり気分で落ち着きました
 

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映画の情報+雑学のメールマガジンです。気まぐれ発行の、ひょっこりメルマガ。勝
手に送りつけますが、不要の場合は「いらないよ」と言っていただければ。といって
も、なかなかそうは言えないのでしょうけど。

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◎ 公開中の新作から………  『ナイロビの蜂』  2005年度作品
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 ジョン・ル・カレの原作を『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレス
監督が演出しました。前作同様のシャープな映像に目を奪われる。特にアフリカの風
景の撮り方が素晴らしい。

 ル・カレの話ですから当然サスペンスなんですが、単純なサスペンス・アクション
を期待すると外しそう。外交官の妻、テッサ(レイチェル・ワイズ)は反グローバリ
ズムのウルトラ過激な闘士、という女性です。それゆえに、映画の冒頭近くであっさ
りと謀殺されてしまう。真相を明らかにせんと、夫(レイフ・ファインズ)が嗅ぎ回
り、奔走する、というのが話の中核。

 話の土台としてサスペンスを置き、その上でテッサという女性とその周囲にいる人々
との間の愛情と誠実さを描くという形をとってます。サスペンスとしては物足りない
部分は多々あると思います。しかしハリウッド・スタイルのお定まりな展開からは逸
脱している、その部分にこそ面白さがあるんです。

 人は人との絆の中でこそ生きている。テッサとのかかわりの中で、人々は自分の心
の誠実さが試されていく。テッサの死に直面した彼らが戸惑い、思い悩むのは当然の
こと。

 CGまみれの大味な映画に飽いているあなた、心ある映画を観てみませんか?

 他の配役は、ピート・ポスルスウェイト、ビル・ナイ、ダニー・ヒューストンほか。


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◎ ちょっと雑談………  「映画の中のクラシック音楽」
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 クラシック音楽が使われている映画のデータベース作りを始めてから4年近くにな
ります。リストに挙がってる映像ソフト(ほとんどが劇場映画)は3000本に達し、
今後もまだまだ増える予定です。

 観た映画で曲名が分からないものは調べます。いくつか方法があるのですが、まず、
iMDbという米国の映画データベースサイトで映画の使用曲を確認します(たいて
い観る前に確認してるが)。iMDbのデータはほとんどがエンドクレジットの曲目
リストなので、クレジットに挙がってなければ、たいていないのです。

 クラシック音楽のメロディ検索ができるサイトは複数あります。それでも分からな
い場合は人に教えてもらいます。あるいは自分のサイトの「使用曲名の分からない映
画」というページで、情報提供を募ります。音声データがある場合はそれも公開しま
す。音があると、ビジターが知らせてくれることがけっこうあるんです。相手にとっ
てはクイズ感覚なんでしょうね。

 レンタルやテレビで観た映画の曲は確認をとりやすいけど、映画館で観るものは曲
を覚えて帰らなくてはなりません。知ってる曲の場合は可能ですが、それとて何曲も
あるとお手上げです。一曲だけならなんとか覚えて帰ることができるようになりまし
た。映画を2本ハシゴして、1本目の冒頭で鳴った曲を覚えて帰ったこともあります。

 不思議に思うのですが、映画館で観ると7割ほどがクラシック音楽を使ってます。
しかしテレビやレンタルだと3割ほどになってしまう。この違いはなんなんだろう。
観たい気持ちが強い映画=クラシックが使われやすい映画? ということもないと思
うんだけど。

 誤解されることはないと思いますが、上記の3000本はすべて僕が自分で観て確
認したものではありません。各種データベースから拾い集めたもの。人からの情報。
雑誌やチラシなどに載っていたもの。いろいろあります。自分でチェックしたものは
そのうち何パーセントだろう? 数えたことありません。

 というようなわけでして、今も映画館では紙とペンをしっかり握りしめて映画を観
る、という日々を送っております(お気楽すぎ?)。


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◎ このあとの、期待していい、のかな?映画
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『インサイド・マン』 6/10ロードショー公開 2006年度作品

 このところ精彩のなかったスパイク・リーの新作です。久しぶりにGoodな仕上
がりだそうで、米国の批評家たちも好意的に取り上げています。しかも今回は娯楽色
が強いようです。楽しみですね。

 銀行強盗が銀行にたてこもるという話じたいは珍しいものではありません。変わっ
てるのは、失敗して警察に包囲されたのではなく、籠城することじたいが目的であっ
たかのような行動を犯人グループがとる、ということです。彼らの真の目的は何?

 配役にはクライヴ・オーウェン、ジョディ・フォスター、デンゼル・ワシントン、
ウィレム・デフォー、クリストファー・プラマーと、重厚な顔ぶれが並びます。げっ
ぷが出そうなほどヘヴィーですね。チラシのヴィジュアルもヘヴィーに決めてます。
サスペンスなんですから、この重たい印象は気になるところです。


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 メルマガは絶対やらないと決めてました。他にやりたいことはいっぱいあったし、
定期発行物にしばられるのもいやだった。ミニコミと違ってメルマガは発行間隔が短
い。ひょっこり通信みたいに半年一回が許されるものではありません。最低でも月刊
です。とてもそんなやってられない、と思ってました。

 環境がちょっと変わってきて、要するにヒマになったんです。HP「極楽page」
は巨大になって、飽和状態に近い。活動らしい活動はなんにもやってない。賃仕事は
最低限度。ぽっかり時間が空いてしまいました。映画と読書と音楽鑑賞ばかりの毎日
では物足りなくなって、自己発信欲求が急に高まったのです。

 とはいえ、面倒くさくなって適度なところでやめてしまうかもしれません。まあ、
あまり期待しないで、届いたら「まだやっとんのか」と思ってください。


「シネ漫コラム」5.25『メルキアデス・エストラーダ 3度の埋葬』
「山歩き・里歩きMap」5.18「鴨川←|西高瀬川|→東寺」
「シネ漫コラム」5.16『シムソンズ』
「シネ漫コラム」5.9『マンダレイ』
「じべたでひろたもん」5.4 「袖なしのジャケット」
「映画未使用名曲」5.1 更新 ニコライ・カプースチン
「シネ漫コラム」4.23 新規『いま、会いにゆきます』
「御漫画」4.20 更新「振り落とされるな!」
「山歩き・里歩きMap」4.11 新規「淀←|桂川|→背割堤」

『マイ・アーキテクト』‥‥‥‥‥‥‥‥アクビしまくってました
『プロデューサーズ』(旧作)‥‥‥‥‥‥‥‥新作よりは好印象
『ニュー・ワールド』‥‥‥‥マリックの詩的映像世界を評価する
『ナイロビの蜂』心を語る映像の力、CG抜きの映像は素晴らしい
『シムソンズ』‥‥‥‥‥‥‥カーリングのシーンがゾクゾク興奮
『レント』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥まったく入れない
『プロデューサーズ』(新作)‥‥‥‥観て損した気分になります
『運命じゃない人』‥‥‥‥‥‥‥‥観ておトクな気分になれます
『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』堂々たる風格の名作
『かもめ食堂』‥‥‥‥‥‥‥‥‥まったり気分で落ち着きました
『いま、会いにゆきます』TV‥‥‥‥‥‥‥‥‥号泣でした(汗)
『マンダレイ』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥シリアスなのに面白すぎる
『ラストデイズ』‥‥突き放されたみたいでちょっと分かりづらい
『ナルニア〜』‥‥原作がアレですので、比較して名作に見えます
『ウォレスと〜』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥悪くないけどマンネリ気分
『ブロークバック・マウンテン』‥静かに心の中に沁みてゆきます
『博士の愛した数式』心にしみる、近年の日本映画の大いなる収穫
 

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